四季送り 2025/05/15 Thu 四季送り げんみ❌ まーた悪夢!続きを読む あとひとりいるはず。 血塗れのリビングを歩いてたら、廊下で気配がした。 足音を立てずに、速やかに。人の気配を追って廊下に出たところで、足首を掴まれた。 女の人が、最後の力で。 とっくに殺したと思ってた。この家には人がたくさん居たから、即死するような傷を与えるほど時間かけれなかった反省点はある。それでも、致命傷は与えたはずだった。 迷わず包丁を振り上げる。その人には、恨み言を言う力も残ってないようだった。 違う。 必死に、何かを守る目だ。自分はどうなっても。時々、仕事中にこんな目をする人はいる。結果は変わらないのに。 ……そう、変わらない。 仕事だから、仕方ない。 “この目に特別感じることなんてない”。仕事相手の都合なんて、知ったところで無意味だ。かえって刃を鈍らせるだけかもしれない。 ほら、だから。 特に感情を抱くこともなく、包丁を急所目掛けて突き立てる。もう、苦しまなくて良いように。それだけに専念する。 『さっきの気配は、きっとこの人だったに違いない』。そう、覆い隠しながら。 目が覚める。 吐き気がする。 頭の中の喧しさは、いつもに増して。 でも、感じない。僕は何も感じない。 仕事したことにだけは、何も、誰であろうと、感じては駄目だから。命は等価だ。そうでなければ、僕は。 記憶だったかもしれない夢を、咀嚼不良のまま無理矢理呑み込む。割れそうな頭を薬で黙らせれば、日常を開始できる。 それがいつの、誰の、どんな仕事だったのかなんて、答え合わせすることも無い。特別な仕事に昇華させることなく、僕は今日の衣服に袖を通した。◆ 勝手に見た夢だし、記憶は歪むもの。谷崎家以外にも一家惨殺はあったからね。でも、もしかしたら。 実在したかどうかも未確定な、もう取り返しのつかない悪夢を見た話でした。 才能はあっても適性の有無は別なのだよ。それでも殺し屋の才能があるのは、やり遂げた上で生きてしまえるところで(n回目)。 実に皮肉で、実に人間らしいと思います。畳む#四季送り #SS
まーた悪夢!
あとひとりいるはず。
血塗れのリビングを歩いてたら、廊下で気配がした。
足音を立てずに、速やかに。人の気配を追って廊下に出たところで、足首を掴まれた。
女の人が、最後の力で。
とっくに殺したと思ってた。この家には人がたくさん居たから、即死するような傷を与えるほど時間かけれなかった反省点はある。それでも、致命傷は与えたはずだった。
迷わず包丁を振り上げる。その人には、恨み言を言う力も残ってないようだった。
違う。
必死に、何かを守る目だ。自分はどうなっても。時々、仕事中にこんな目をする人はいる。結果は変わらないのに。
……そう、変わらない。
仕事だから、仕方ない。
“この目に特別感じることなんてない”。仕事相手の都合なんて、知ったところで無意味だ。かえって刃を鈍らせるだけかもしれない。
ほら、だから。
特に感情を抱くこともなく、包丁を急所目掛けて突き立てる。もう、苦しまなくて良いように。それだけに専念する。
『さっきの気配は、きっとこの人だったに違いない』。そう、覆い隠しながら。
目が覚める。
吐き気がする。
頭の中の喧しさは、いつもに増して。
でも、感じない。僕は何も感じない。
仕事したことにだけは、何も、誰であろうと、感じては駄目だから。命は等価だ。そうでなければ、僕は。
記憶だったかもしれない夢を、咀嚼不良のまま無理矢理呑み込む。割れそうな頭を薬で黙らせれば、日常を開始できる。
それがいつの、誰の、どんな仕事だったのかなんて、答え合わせすることも無い。特別な仕事に昇華させることなく、僕は今日の衣服に袖を通した。
◆
勝手に見た夢だし、記憶は歪むもの。谷崎家以外にも一家惨殺はあったからね。でも、もしかしたら。
実在したかどうかも未確定な、もう取り返しのつかない悪夢を見た話でした。
才能はあっても適性の有無は別なのだよ。それでも殺し屋の才能があるのは、やり遂げた上で生きてしまえるところで(n回目)。
実に皮肉で、実に人間らしいと思います。畳む
#四季送り #SS